
エレベーター付き賃貸物件は入居付けにプラスに働くことがあるが、導入やメンテナンスに大きなコストを要するマイナス面もある。
突発的な故障が発生し閉じ込めといった事故が起こった場合、所有者や管理者が責任を問われる可能性もある。安全性には常に気を配らなければならず、このことはオーナーの負担となる。
また、エレベーターの導入当初は不要だった安全装置が、その後の法改正によって設置が義務化されるケースもある。2009年9月には「戸開(とびらき)走行保護装置」(UCMP)の設置が義務化された。
しかし、同装置の認知度は低く設置費用もかかるため、設置されているエレベーターは少ないのが現状だ。
■戸開走行保護装置とは?
エレベーターの「戸開走行保護装置」とは、エレベーターのドアが開いているときに、人を乗せるかごが動かないようにする安全装置です。
2009年9月に建築基準法が改正され、同年9月28日以降に設置されたエレベーターに対して戸開走行保護装置の設置が義務付けられました。
エレベーターが正常に動作した状態であれば、ドアが開いたままかごが動くことはまず、ありません。
しかし、運転制御装置やブレーキなどが故障すると、ドアが閉じる前にかごが昇降する可能性があり、事故につながる危険性があります。
ここで役立つのが、戸開走行保護装置です。具体的には、「2個の独立したブレーキ」「かごの移動を感知する装置」「通常の制御回路とは独立した制御回路」の3つの要件をすべて満たした装置のことを指し、
運転制御回路やブレーキが故障しても、独立した回路によって戸開走行を検出し、エレベーターを停止させる機能を持ちます。
戸開走行保護装置は、国土交通省の認定を取得しているため、安全性が保障されている点もメリットの1つと言えます。
■エレベーターで相次ぐ事故
戸開走行保護装置の設置義務化に至った大きな要因は、2006年に東京都港区の共同住宅で発生した事故です。
高校生がエレベーターから降りようとしたところ、ドアが開いたままかごが急上昇。これにより、高校生は乗降口の上枠とかごの床部分に挟まれ命を落としてしまいました。
非常に痛ましく衝撃的なニュースとだけあって、エレベーターの安全性確保に関して一石を投じる事故となったことを記憶しています。
また、2009年の建築基準法改正では、地震によるエレベーター内の閉じ込め対策として、「初期微動(P波)感知地震時管制運転装置」の設置も義務化されました。
これは、2005年7月に発生した千葉県北西部地震でエレベーターの閉じ込め事故が起こったことを受けて講じられた対策です。
初期微動(P波)とは、強い揺れを起こす本震(S波)前に発生する小さな揺れのことです。
この装置には、初期微動(P波)を感知すると強制的にエレベーターを最寄り階に停止させ、ドアを開放する機能がああり、利用者の閉じ込め防止に効果的とされています。
上記とあわせて「停電時自動着床装置」の設置も義務化されています。
これは、停電が発生するとエレベーターの動力電源をバッテリー電源に切り替え、自動的に最寄りの階まで運転し扉を開放するする装置です。地震時と同様、かご内での閉じ込めを抑止する目的があります。
その後、2011年に起こった東日本大震災を受けて、2014年にも建築基準法が改正されています。
地震などの震動で、かごを効率よく昇降させるための「釣合おもり」が脱落するケースが多発し、この脱落が発生しない構造方法を用いるよう定められるなど、耐震性強化措置が義務付けられました。
■国や地方自治体による設置補助金も
安全性を担保する上で設置が求められるエレベーターの安全装置ですが、設置はあまり進んでいないのが実情です。法改正前に設置された「既存不適格」のエレベーターがまだまだ多く存在するようです。
国交省の調査によると、直近の2022年度に定期検査報告が行われた全国のエレベーター約76万台のうち、戸開走行保護装置が設置されていたのは約35%に過ぎません。
エレベーターの安全装置の設置を推進すべく、国や地方自治体では既設エレベーターの防災対策改修工事に対して、さまざまな支援を実施しています。下記の工事に1台あたり最大で950万円の補助金が支払われる場合があります。
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(1)地震時管制運転装置の設置
(2)主要機器の耐震補強措置
(3)戸開走行保護装置の設置
(4)釣合おもりの脱落防止措置
(5)主要な支持部分の耐震化
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対象となるエリアは、三大都市圏、人口5万人以上の市、および地方公共団体が指定する区域。延床面積が1000平米以上あることや、長期修繕計画等を作成していることなどが要件となっています。
また、地震などの発生によりエレベーター内に閉じ込めが発生してしまった場合に自動で最寄り階に着床する「リスタート運転機能」の追加や、運転停止をした際の「自動診断・仮復旧運転機能」の追加も補助対象です。
地方公共団体と協定を結んだ避難場所等以外の建築物の場合は、先述の5つの防災対策改修工事を完了させた上で、1台あたり最大で250万円の補助金が支払われます。
■所有者・管理者の意識改革は必要
築年数の経過した物件のオーナー様に対しては、エレベーターのリニューアルを推奨していますが、高いコストがかかることから、資金に余裕のあるオーナー様でなければ設置について前向きな考えを持ちづらいのが実情です。
違法ではないことやコストの観点から「使えるうちは使いたい」という考えのオーナー様が多く、耐用年数を大幅に超過したり、メーカーからの部品供給が終了したりと差し迫った状況になったところで、ようやく改修工事を決断するといったケースも多いです。
しかし、使用上問題なくても安全性の観点から進んでエレベーター改修を実施していくことが望ましいです。
弊社は通常の足場による大規模修繕工事と無足場工法によるロープアクセス工事の両方をメイン事業としていますが、
空室対策、不動産管理、保険、士業の派遣などオーナー様の様々なお困りごとをトータルでサポートをしております。
相談は無料ですので、お悩みがある方は、お気軽にお問い合わせください。